とりあえずおめでとうと

頼む、今夜は泣かせてくれ・・

まずはタイガース、3回まで完全のロマノに4回、関本が渋く二遊間を破り、突破口を開く。続くシーツがドンピシャのタイミングで真っ直ぐを捉え、レフトスタンドへ先制2ラン。更にアニキが2ベースで流れを続け、浜ちゃん芸術的なライト打ちで追い打ちの2ランで大きい4点。これで大勢は決したと言っていい。

が、何と言っても今日は井川だ。いつも以上に気合の篭ったピッチングで主力抜きのカープ打線を寄せ付けない。いつもは歩いてベンチに戻るのに、今日は走っていた。それだけでも「何か」を予感させるものがあった。そして9回1失点で完投勝利を挙げた瞬間、目から溢れるものが・・これには驚いた。井川と言えば無表情、鉄仮面で淡々と投げる姿しか記憶にないのに・・それだけ込み上げてくる想いがあったんだろう。

エースと呼ばれ、それに相応しい成績を残しながら、近年は内容や数字ともファンが期待するような物ではなかった。今年もここまで二ケタ勝利を挙げながら、節目の試合で結果を残せず、ファンの声も厳しかった。そして井川は常々、自分の仕事は「試合を壊さない事」「ローテーションを守る事」と言い、去年不調で二軍落ちした以外はローテーションから外れた事はなかった。それこそが井川の誇りであったのに、ファンは常に完投、完封を要求する。その葛藤、重圧とも戦いながらやって来た。結果が出ない自分との戦いに勝利した安堵・・もういいじゃない、そういう呪縛から解放してあげよう。ただひたすらにキャッチャーミットめがけて思い切り投げ込む。原点に戻ったナイスピッチングだった。またこれでチームの団結力は高まるに違いない。もう止まらんよ。

そしてファイターズ。2点を先制され、絶好調の和田からこちらも4回、田中賢、セギノールの2本のソロで逆転。6回からはダルビッシュが魂の投球で繋ぎ、武田久、最後はマイケルがリーグ新記録の39セーブで締め括り、見事にシーズン一位通過を決めた。勢いも確かにあったろうが、地に足をしっかりつけた強い戦いぶり。プレーオフでも勝ち上がる可能性は大。

一連のセレモニーが済んだ後、静まるスタンドと暗転する場内。そして一人グラウンドに登場するこの男。今日、背番号をタイガース入団時の63番に戻した新庄はVTRの間もじっと佇み、その後、ユニフォームを脱ぎ、グラブと共にグラウンドに置いて、メッセージをTシャツの背中に認め、自らは何も語らずにグラウンドを去った・・カッコ良過ぎるで。・゚・(ノД`)・゚・。バットじゃなくてグラブというのが新庄らしかった。だれよりも野球を愛し、真剣に取り組んだ。じゃなきゃ、メジャーまで行けないって。だれもが魅了される男だった。
俺が魅せられたのは一軍デビューした1992年、チームが優勝争いをしている9月中旬のカープ戦。0-0の9回表二死二三塁で相手打者が右中間へ強烈なライナーを放ち、誰もが「抜かれた!」と思った瞬間、信じられない跳躍力でダイビングキャッチ。そしてその裏、大投手大野からサヨナラホームランを放ち、甲子園の声援を独り占めした試合。あの時のカッコ良さは男の俺でも惚れた。
まだまだプレーオフ日本シリーズもある。よっしゃ、最後は甲子園でやらせてあげようじゃないの。待っとけよ、新庄!