栄冠は君に輝く

「奇跡」という言葉を間単に使いたくはないのですが、もうそれを使わなければ説明出来ないような劇的な展開だった。
完璧な広陵ペースの試合だった。7回に野村が自ら久保の無失点記録を破る2点タイムリー2ベースで4-0。ピッチングも被安打1で10奪三振。全く付け入る隙が無い完璧な内容で、常識で言えばこのまま広陵が悲願の夏優勝を果たす筈だった。
が、しかし8回裏、それまで眠っていた女神が佐賀北に突然手を差し伸べた。一死から久保がボテボテの当たりながら三遊間を破るヒット。代打新川もライト前で続き、1番辻が際どいスライダーを見極め死球で満塁。ここから球場全体の雰囲気が一変。アルプススタンドだけでなく、内野外野ネット裏まで手拍子で佐賀北を応援する。そう、まるでタイガース戦のように。
それまで冷静なピッチングを続けていた野村も徐々にこの流れに飲まれていく。際どいコースにも審判の右手は上がらない。井出にも四球。押し出しで3点差。ここで今大会2ホーマーの副島が打席へ。10人目の野手である観客の応援を味方に付け、3球目にバットを一閃すると、打球は美しい放物線を描き、レフトスタンド中段に吸い込まれた。満塁本塁打。まさか、まさかの大逆転。
9回表、広陵は先頭の林が執念で三遊間を破り出塁。続く岡田は一塁前へ送りバント。林は三塁ベースが空いているのを見てスピードを緩めず三塁へ。一塁手辻もこれに気付いて三塁へ送球。間一髪のタイミングも惜しくもアウト。林の判断も悪くなかった。常に隙あらば先の塁を狙う意識が徹底されていたからの走塁。上手く反応した佐賀北が上だった。

勝戦グランドスラムは奇しくも14年前の佐賀商業西原以来、史上2本目。思えばあの時の佐賀商業も開幕試合から頂点まで上り詰めた。歴史は繰り返すというか、神様の悪戯か・・
特待生問題で揺れた今年の甲子園。結局優勝したのは特待生とは無縁の公立高校だった。これは大いなるアンチテーゼだったのかも知れない。素質はそれ程優れなくても、施設に恵まれなくても、工夫と熱意で頑張ればここまで出来る。
おめでとう、佐賀北高校。今年の甲子園で一番長く、たくさん試合をした女神に愛されしチーム。
準優勝おめでとう、広陵高校。投攻守走、全てにハイレベルなチームでした。熱中症の中井監督を気遣う心も素晴らしかった。ただ、相手が悪かった・・

今年も熱い夏だった。球児の皆さん、感動をありがとう!